今週のお題「自分で作った◯◯」
36,000文字の歴史小説
完成までの苦闘と感動
今週のお題は「自分で作った◯◯」。
私が作ったのは、36,000文字を超える長編歴史小説です。
タイトルは『覇商信長の経済革命:見えざる銭の天下布武』。
「なぜ、わざわざ36,000文字もかけて小説を書いたのか?」
そう聞かれると、答えはただ一つ。
「信長が単なる独裁者ではなく、
現代に通じる『経済人』であったことを、
どうしても自分の手で形にしたかったから」です。
歴史が好きで、特に信長が好きで、
様々な本を読み漁るうちに、ふと気づいたのです。
信長の政策、たとえば楽市楽座や関所の撤廃は、
単なる善政ではなく、すべて「銭」という
血流を巡らせるための、
合理的な計算に基づいていたのではないか?と。
この気づきを、誰かに伝えたい。
でも、歴史解説本では面白くない。
物語として、信長の冷徹な計算と、
その裏にある壮大な夢を描き出したい。
そう考えたとき、創作という道しかありませんでした。
かくして、私の孤独な「天下布武」が始まったのです。
終わりが見えないトンネル
執筆を始めた当初は、勢いだけはありました。
ノートいっぱいにプロットを書き出し、
参考文献を山のように積み上げ、
「よし、やるぞ!」と意気込んでいました。
しかし、
わずか数千文字で早くも最初の壁にぶつかります。
歴史小説は、単なる創作ではありません。
時代背景、人々の暮らし、言葉遣い、
そして何よりも歴史的事実という
巨大な制約の中で、物語を紡いでいく必要があります。
例えば、信長が家臣たちに語りかける
言葉一つとっても、
「本当にこの時代にこんな言葉を使ったのか?」
と疑念が頭をよぎり、その度に資料を読み直す。
わずか一行書くために、
何時間も費やすこともありました。
中でも特に苦労したのは、
経済の専門用語を、歴史の物語の中に
自然に溶け込ませることでした。
「比叡山の高利貸し」
「南蛮貿易の利益」
「商人たちの投資」
これらを、ただの解説ではなく、
信長という人物の「思想」として
表現するために、何度も何度も書き直しました。
「こんな書き方だと、
読者が退屈してしまうのではないか?」
「エンタメとして成立しているか?」
自問自答を繰り返す日々。
まるで霧の中を彷徨うような孤独な作業でした。
36,000文字という途方もない目標を前に、
何度も「もうやめようか」と
心が折れそうになりました。
ブログの投稿画面を開いては閉じ、
締め切りも誰に課されたわけでもないのに、
焦燥感だけが募っていきました。
それはまるで、先の見えない戦で
兵を率いる信長になったような気分でした。
創作の快楽
歴史の隙間を埋める瞬間
しかし、苦闘の先に、大きな喜びがありました。
それは、歴史の「もしも」を、
自分の想像力で埋めていく瞬間の高揚感です。
事実が淡々と記されています。
しかし、その裏で信長が何を思い、
どのような決断を下したのかは、
誰にも分かりません。
小説では、その「空白」に、
私の解釈を注ぎ込みました。
比叡山の焼き討ちを、
単なる非道な行いとしてではなく、
腐敗した金融ネットワークを断ち切るための、
信長の冷徹な判断として描きました。
「この国の経済を滞らせる癌を摘出する」
という信長の言葉を、作中で生み出したとき、
物語がまるで生き物のように動き出すのを感じました。
特に感動的だったのは、長篠の戦いのシーンです。
武田騎馬隊を圧倒した「三段撃ち」は、
あまりにも有名です。
しかし、3,000丁もの鉄砲の費用は、
一体誰がどうやって賄ったのか?
この謎に、「見えざる手、商人の天下人選び」
という物語を重ね合わせました。
堺や博多の商人たちが、
信長に巨額の資金を投じ、
鉄砲や弾薬を調達する。
それは、信長を「天下人」として選び、
自分たちの未来に「投資」したのだと解釈しました。
この設定を思いついたとき、鳥肌が立ちました。
歴史の点が、線となり、
物語という巨大な絵となって
目の前に広がっていく。
それは、歴史の謎を解き明かす
探偵になったような、あ
るいは神の視点から歴史を
再構築するような、何とも言えない興奮でした。
まさに、自分で「歴史」を創っている
かのような感覚。
この感動こそが、
私を執筆へと駆り立てる原動力となりました。
完成、そして新たな問いへ
そして、ついに完成しました。36,000文字。
最後の文字を打ち込み終えたとき、
私はただただ、呆然としていました。
「とうとう、やり遂げたのか……」
達成感とともに、
この作品が本当に読者の心に響くのか、
という不安も同時に押し寄せてきました。
世の中には、歴史の専門家が書いた
素晴らしい本がたくさんあります。
私の稚拙な小説が、
その中に埋もれてしまうのではないかと。
でも、この作品には、誰にも真似できない
「私の信長」がいます。
単なる権力欲の亡者ではなく、
武力だけでなく経済の力で天下を変えようとした、
孤独な革命家としての信長が。
彼が安土城という理想郷に込めた経済国家の夢、
そして本能寺の変という悲劇の裏に潜む
「経済」という名の宿命を、
私の視点で描くことができました。
自分で作ったものは、
どこか不格好かもしれません。
でも、そこには、既製品にはない、
作者の苦闘と情熱、そして魂が宿っています。
完成した小説を読み返すと、
当時の苦労が蘇ると同時に、
あの歴史の隙間を埋めたときの感動が
再び胸を熱くします。
この作品は、私にとって、
歴史の深遠さを学び、創作の楽しさを知る、
かけがえのない経験となりました。
信長が遺した問い「経済とは何か」は、
現代社会を生きる私たちにも深く響くものです。
私の小説が、読者の皆さんにとって、
信長という人物、そして歴史というものに、
新たな興味を抱くきっかけとなれば、これ以上の喜びはありません
。


