一緒に学ぶ社会人ノート

自分なりに勉強をしたものを忘備録的にまとめています。

インドネシア高速鉄道が年間580億円の大赤字!

インドネシア高速鉄道

年間580億円の大赤字!

日本の新幹線技術の真価が見えた瞬間

 

「政府負担ゼロ」と豪語していた

中国の高速鉄道プロジェクトが、

開業わずか1年で年間400億円を超える

巨額赤字を垂れ流している

現実をご存知でしょうか。

 

インドネシアの首都ジャカルタ

第三の都市バンドンを結ぶ高速鉄道

「Whoosh」の経営状況が、

想像以上に深刻な事態に陥っています。

 

実は、このプロジェクトには

日本の新幹線技術が採用される

予定でしたが、最終的に中国案が

採用されました。

 

今その結果がどうなったのか、

そして日本の鉄道技術の真価について

詳しく見ていきましょう。

 

衝撃の赤字規模!

年間580億円という異常事態

 

インドネシア高速鉄道を運営する

PT Kereta Cepat Indonesia-China(KCIC)

の財務状況は、まさに「赤字の垂れ流し」

という表現がふさわしい惨状です。

 

2024年通年では4.2兆ルピア(約400億円)

という途方もない損失を計上しました。

 

特に深刻なのは、このうちインドネシア側の

国営企業である国鉄(KAI)が

2.23兆ルピア(約200億円)を

負担していることです。

 

つまり、赤字の半分をインドネシア政府が

税金で穴埋めしている状況なのです。

 

2025年前半には利用客の増加により

損失幅は若干改善したものの、

それでも上半期だけで1.6兆ルピア(約160億円)

の赤字を出し、この過半もKAIが

肩代わりしています。

 

最も衝撃的なのは、

インドネシア国会の試算です。

 

このままでは2026年に

6兆ルピア規模(約580億円)の赤字に膨らむ

可能性があるとされています。

 

年間に500億円から600億円規模の赤字を

垂れ流し続けるというのは、

もはや異常事態と言わざるを得ません。

 

「政府保証なし」という

甘い罠に落ちたインドネシア

 

実は、このプロジェクトの発端には

日本が深く関わっています。

 

当初、日本の国際協力機構(JICA)が

長年にわたり調査に協力し、

新幹線システムの導入が有力視されていました。

 

ところが、2015年に状況が一変します。

 

後から参入した中国が

「政府保証は不要」

という破格の条件を提示したのです。

 

日本の提案では、国際的な標準として、

万が一事業がうまくいかなかった場合の

インドネシア政府による債務保証」を

求めていました。

 

これは貸す側と借りる側が共に

リスクを負い、責任を持って事業を

成功させるという堅実なアプローチです。

 

一方、中国は

「プロジェクトにかかる事業費の全額を

中国側が負担し、インドネシア政府に

一切の財政負担を求めない」

という、まさに「太っ腹」な提案をしました。

 

公的な債務を増やしたくない

インドネシア政府にとって、

この「財政負担ゼロ」

という甘い言葉は、

日本の技術的優位性を上回るほどの

魅力を持っていたのです。

 

しかし、この「甘い罠」が

後に大きな問題を引き起こすことになります。

建設段階から始まった「約束破り」の連鎖

 

中国の「政府負担ゼロ」という美味しい話は、

早々に破綻することになりました。

 

プロジェクトは2016年に着工し、

当初は2019年に完成予定でした。

 

しかし、用地買収の難航や

新型コロナウイルスの影響で

工期は大幅に遅れ、最終的に2023年の

開業まで4年もの遅れが生じました。

 

さらに深刻だったのは、

建設費の大幅な超過です。

 

最終的に、当初予算を約12億米ドル

(約1800億円)も上回る

コスト超過が発生しました。

 

この巨額の追加費用は、

事業主体である合弁会社

単独で吸収できる規模を

はるかに超えていました。

 

結果として、インドネシア政府は

「国家予算からの資金投入」、

つまり税金を使った財政出動

余儀なくされたのです。

 

これで「政府の財政負担は一切ない」

という大原則は完全に破綻しました。

 

つまり、中国の「政府保証なし」

という約束は、リスクを消し去ったわけでは

ありませんでした。

 

単に問題の表面化を先送りにし

ただけだったのです。

 

「時限爆弾」と呼ばれる財務状況の深刻度

 

現在の状況について、

インドネシア国鉄の新総裁ラシディン氏は

国会で「高速鉄道の財務問題は時限爆弾だ」

と危機感を露わにしています。

 

この表現が、事態の深刻さを物語っています。

 

採算が取れるまでに40年かかると

言われているこのプロジェクト。

 

1日平均2.4万人の利用者があっても、

年間530万人を超える乗客を運んでも、

巨額の建設費と運営費を賄うには

程遠い状況です。

 

興味深いことに、運行面では決して

失敗ではありません。

 

最高時速350kmでジャカルタとバンドン間を

46分で結ぶスピードは多くの国民から

支持を得ており、

週末には満席になることも珍しくありません。

 

しかし、この「大人気」が「収益」に

直結していないところに、

このプロジェクトの根本的な

問題があります。

 

運行の成功と経営の失敗という、

皮肉な結果になっているのです。

 

日本の新幹線技術が示す「本当の価値」

 

このインドネシア高速鉄道の現状を見ると、

日本の新幹線技術の真価が

浮き彫りになってきます。

 

日本の新幹線は、単なる「速い電車」

ではありません。

 

60年近い運行実績の中で培われた安全性、

定時運行率99%という信頼性、

そして何より

 

「持続可能な経営システム」

 

こそが最大の価値なのです。

 

実際、JR東海東海道新幹線は開業以来、

一度も大きな赤字を出すことなく、

むしろ会社の収益の柱となっています。

 

これは単に技術力だけでなく、

需要予測、運賃設定、沿線開発、保守管理に

至るまでの総合的なシステムの賜物です。

 

また、建設コストについても、

日本の新幹線は確かに初期投資は高いものの、

長期的に見た場合の経営安定性と

安全性を考慮すれば、

決して「高い買い物」では

ないことが証明されています。

 

興味深いのは、

日本がインドネシアで手がけている

ジャカルタMRT(都市高速鉄道)の状況です。

 

2019年の開業以来、

市民の足として順調に運行されており、

延伸計画も順調に進んでいます。

 

これは日本の円借款と技術協力による

成功例として注目されています。

 

「安物買いの銭失い」が教える

国家プロジェクトの教訓

 

インドネシア高速鉄道の赤字問題は、

「安物買いの銭失い」

という言葉を国家レベルで体現した

事例と言えるでしょう。

 

初期の「政府負担ゼロ」という

甘い言葉に惹かれた結果、

建設の遅延、予算の大幅超過、

そして運営開始後の巨額赤字という

三重苦に見舞われることになったのです。

 

この状況は、インフラプロジェクトにおいて

「初期コストの安さ」だけを重視することの

危険性を如実に示しています。

 

本当に大切なのは、

長期的に持続可能な経営ができるか

どうかという視点です。

 

また、「政府保証」のような契約条件は、

決して「足枷」ではなく、

プロジェクトの成功を担保する

「安全装置」であることも明らかになりました。

 

リスクを適切に分担することで、

双方が責任を持ってプロジェクトに

取り組むことができるのです。

 

さらに延伸計画で深まる泥沼

 

さらに驚くべきことに、

インドネシア政府はこの赤字続きの高速鉄道を、

東部の大都市スラバヤまで延伸する

野心的な計画を進めようとしています。

 

この延伸が実現すれば、

ジャカルタからスラバヤまでの約730キロ

(東京から広島までの直線距離に相当)を

高速鉄道で結ぶことになり、

所要時間は約3時間半と見込まれています。

 

2024年に就任したプラボウォ大統領は、

この延伸計画をさらに積極的に推進する姿勢を

示しており、関係閣僚に最優先で進めるよう

特別指示を出しています。

 

しかし、現在の路線が年間数百億円の赤字を

垂れ流している状況で、

さらに巨額の投資を行うことの是非については、

大いに疑問が残ります。

 

第一期工事での失敗を踏まえ、

より慎重なアプローチが求められるはずです。

 

日本が歩むべき「質の高いインフラ輸出」の道

 

今回のインドネシア高速鉄道の現状は、

日本にとって貴重な教訓を

提供してくれています。

 

まず、価格競争に巻き込まれることなく、

「日本の技術の真価」を正しく伝えることの

重要性です。

 

日本の新幹線技術の価値は、

60年間で死亡事故ゼロという安全性、

99%を超える定時運行率、

そして長期的に見た経営の健全性にあります。

 

また、単なる技術供与ではなく、

運行管理、メンテナンス、安全教育、

さらには経営ノウハウに至るまでの

「人づくり」も含めた

パッケージを提供することで、

他国との明確な差別化を図ることができます。

 

実際、インドネシアでも高速鉄道とは別に、

ジャカルタMRTプロジェクトが順調に

進んでいることは、日本の技術と協力姿勢が

正しく評価されている証拠です。

 

今後、日本がインフラ輸出を進める際は、

技術の優秀性だけでなく、

長期的な経営安定性や持続可能性も含めた

「総合的な価値」をしっかりと

伝えていくことが重要です。

 

日本の新幹線を選ばなくて

正解だった皮肉な現実

 

インドネシア高速鉄道の年間数百億円という

赤字は、決して他人事ではありません。

 

これは「安さ」だけを追求し、

長期的な視点を欠いたプロジェクトの

典型例と言えるでしょう。

 

皮肉なことに、当時多くの日本人が

「裏切られた」と感じたこの案件は、

今振り返ってみると

「日本の新幹線を売らずに済んでよかった」

という結果になっています。

 

もし日本が受注していたら、

この赤字の責任を問われ、

日本の新幹線ブランドに傷が

ついていた可能性があります。

 

一方で、この問題は日本の鉄道技術の真価を

改めて証明する結果ともなりました。

 

新幹線の価値は、

単なる「速さ」や「初期コストの安さ」

ではなく、60年間培ってきた安全性、

運行の確実性、そして持続可能な

経営システムにあるのです。

 

中国の「政府負担ゼロ」という約束が破綻し、

インドネシア政府が結局税金での救済を

余儀なくされている現状を見ると、

リスクを適切に分担し、

責任を明確にする日本のアプローチの正しさが

浮き彫りになります。

 

今後、日本は「安かろう悪かろう」の

価格競争に巻き込まれることなく、

「高品質で持続可能」な技術システムを

世界に提供し続けるべきでしょう。

 

それが結果的に、相手国にとっても

日本にとっても、最も価値ある選択と

なるはずです。

 

インドネシアの事例を教訓として、

日本は今後も「質の高いインフラ輸出」

という王道を歩み続けることが、

真の国際貢献につながるのではないでしょうか。